短編 | ナノ


▼ 五伏


誘ったのはこちらからだった。その誘いに快く応じてじゃあ俺の部屋に来てください、と一言。いつもそういう行為をする時は俺の部屋と決まっていたのだが、珍しく一歩も引かず譲らなかったので舌打ちしながらも仕事終わりに奴の部屋に向かった。

ドアをノックすると早々と開き、ふふ、待ってましたよ、と腕を引かれ、後頭部を引き寄せられて性急に口付けられた。この、普段のこいつからは感じられない獣みたいなキスが俺は好きだ。
バタン、とドアが締まるが変わらず舌は絡められたままで飲みきれなかったどちらのものか分からない唾液が俺の口の端から溢れ出す。

「ふ、ぁ…ごと、五島、待って、」
「……はい?」

不満そうにしながらも俺の唇をぺろりと舐めたあと口を離してくれた。その行為にまた腰が震えるが、それに耐え五島の肩に掴まり支えにしてなんとか立った。

「ここじゃ、嫌だ、ベッドに」
「んふふ、それは聞けないですねぇ。ここでやります」
「!?」

そう言って雑ながらも頭をぶつけないように床に押し倒される。まさか断られるとは予想してなくて、抵抗するが五島はそれに反応することなくいつもの腹立たしい笑みを絶やさず衣服の中に手を入れ始め、それにまたびくりと体を震わせてしまう。

「ちょ、お前なぁっ、何考えてんだ!ここ、日高と同室だろうがっ…あいつが帰ってきたらどうすんだよ…っ」
「だからそれが今日はメインですよぉ。鈍感ですねぇ、伏見さん」

は、何言ってやがるコイツ。元から頭の湧いた奴ではあると思っていたがここまで重症だったなんて。
反抗しようと口を開いたが言葉を吐き出す前に指を口に入れられ舌を掴まれグリグリと弄られる。唾液と涙が溢れてきて、背中を叩きやめてほしいと懇願する。
それをやめることなく楽しそうに眺めながら舌なめずりする。クソ、

「いつも誰構わず舌打ちする悪い舌はこの子ですか?」
「ぁ、ンっ、ゃ、……」
「ふふふ、何も言えないですねぇ。でも舌掴まれて感じてぐちゃぐちゃにしてるド淫乱なんですもんね、伏見さんは」

指が離され口から出て行ったかと思うと着たままのズボンの上から膝でグリグリと強弱をつけて押され、その行為にまた声を上げてしまう。

「伏見さん、ここ玄関ですよ?いくら防音でも廊下に声、聞こえちゃいますよ」
「ぁ、っや、じゃあ、ベッド行けば、いいだろうがぁ、っ」
「それは嫌です。声出してもいいですが、少しだけ抑えてくださいね」

ベッドに行こうともしないし衣服を脱がそうともしない。こいつは恐らく服を着たままの状態でやるつもりなんだろう。脱がせ、と言ったが無視された。糞野郎、覚えてろ

「んっ、ふぅ…ぁっ」
「わ、もう糸引いてグチョグチョですよ」

ズボンのチャックを下げられ、そのままトランクスも脱がされる。俺の自身はわずかに反応してしまっていて、それに五島は満足そうな顔をしたあと俺のそれを舐め始めた。

「触ってもないのにすごいですねぇ」
「や…っ、言うなっ」

卑猥な音が部屋に響き始め、内腿を震わせた。そんなことにはお構いなしで五島は奉仕を続け、裏筋をしつこく嫐ったあと、亀頭に吸い付いて、とうとう口に全部含んでしまう。

「ひぁッ、んんっ、」
「伏見さーん、気持ちいいですかー?」
「ん、んっんっ、ぁ」
「答えになってないですよー」
「ひ、いあああああっ!!」

言葉を紡ごうとした瞬間自身の根元を掴まれて、痛いのに気持ちよくて、涙がまた溢れる。イキそうになってるのに、叶わない。そのもどかしい刺激も快楽に繋がるということをこいつは知っていてやっているのだ。

「伏見さん、イキたいですか?」
「ぅァ、んっ……イきたい!おねが、離して……」
「いいですよ」

根元を掴んでいた指が離れ、鈴口を舌でぐりぐりと刺激され、頭が真っ白になるくらいの快感が押し寄せた。

「あっ……あっあ、ゃぁああ……」
「ふふ、伏見さんの、濃いですね」
「っ……は…飲んだの、かよ」
「伏見さんのものなら全部飲めますよ、大好きです、伏見さん」

息が上がって快感でぼんやりしている俺の耳元に吹き込む様に奴が囁く。 その色っぽい声が堪らなくて、俺はそっぽを向いた。
すると

「そんな反応されるともっと虐めたくなるじゃないですか…」
「は、?」

唾液を指に絡ませてふふ、と笑う姿がこいつのくせに妖艶で、早く触れて欲しくて、下半身がまた熱を持ち始めるのがわかった。
五島の指が、俺のアナルの入口をぬちぬちと弄り始めて、ほぐすというより俺の反応を見て遊んでいるようなソレに、不本意ながらも感じてしまう

「ぃやぁッ…っごと、五島っ! ふぁっ、あっ、ちゃんと…ッ、触、アァっ!」
「え?なんですかぁ?」
「…っあ、あああァッ!!!こ、の野郎、あっ、ぁー …ッ」
「んふふ」

ちゃんと触れ、といい終わる前に俺の前立腺をぐりっ、と押され、ビクビクと腰を揺らしてしまう。本当にドSのクソ野郎だ。

ちゃんと触ったかと思うと、また違うところをぐりぐりといじられて、もどかしい快感がぐるぐるする。なんで、どうして入れてくれないんだと懇願するような目で催促しても望んでいる刺激はもらえない。
強請るしかない、と思った俺は五島の背中に手を回して、ぐいっとこちらに引き寄せる。

「中、掻き回して…?」
「!」
「っは、ァ、イかせて…?気持ちイイとこ、五島に」
「…ほんとに、あなたは」
「へ?…ッちょ、ぁはッ…ゆっく、ひァあ…!」

くちゅ… ちゅくちゅくっ、ぐちゅっ

ズンズンと無遠慮にナカを突くその動きに堪 えられず、俺はきつくソコを締め付けた。 反射的に自分の内襞が五島の指をむぐむぐと食むのが判る。その感覚に酔って、 更に勝手に後孔がヒクヒクと動く。

「ンぁあ…ッひ、指っ…もっ、動かすなッ …!」
「あなたはほんとに勝手な人ですねぇ…」
「も、いい!指でイッちゃう、からぁ!」

中の固い箇所を指先が何度も触れて、意地悪をするように集中的に刺激されて、イきそうになったところでやっと指を抜いてくれた。

「もう、欲しいですか?」
「欲し……ッ!」

蕾に当たる欲望が凄く熱い。いつ取り出したのかとか上の空で考えるがそんなことはもうどうでもよかった。もぞもぞと足を動かし、受け入れやすい様に開脚していく。その動きを五島が無言で見ていて、その視線さえ媚薬となり、足を拡げ切る間中、先走りがたらたらと流れていた。

「…伏見さん、入れますよ、」
「ん……頂戴……?」


ず…ズズ、っくちゅ…

「あ…ぁあ、あ…っ」

競り上がってくる異物感。腹を圧迫されるいつまでたっても慣れないその感触に生理的な涙が溢れる。 その涙を舌で掬ったあと、目にキスをされた。

「動いても、いいですか?」
「ぁあッはや、…はやくっ、はっ…あ、んぁー…ッ」

その言葉に少し息を詰めるのがわかった。それに少し嬉しくなり、ほくそ笑んでやろうと思ったのも束の間、五島の陰嚢が俺の尻を叩き、激しく動いて、思ってた言葉を出すことは出来なかった。
パンパンと乾いた音と結合部から響く下品な水音が俺の鼓膜を犯す。それに追い打ちをかけるように耳を舐められ、舌をいれられ犯される

「やあぁぁ……ふぅう、んッ、耳、らめ、んぅ」
「可愛い声…いつもの伏見さんからは想像も出来ませんよ」

ぐちゅっ…ぐちゅぐちゅぐちゅ!

「ッあー! あっあっあっ、ンぁあ…ヒっ、ごとぉ…ァん!」
「もっと締めつけてくださいよ、ねぇ…?」
「いっ、ぁあああ!?、ーッ!」

びゅっ、びゅくっ

前立腺を思い切り刺激され、押し出される様に勢い良く精液を吐き出す。 奥までハメてイイとこに固定されながら小刻みに中のペニスを揺さぶるもんだから、ギュウ、と奴のペニスを締めつけてしまう。

「ぐッ、う…まだまだ欲しいですよね、伏見さん?」
「ンぁああ…っほひ、ほしーからッぁん! 奥…ッぐりぐりしてぇ!」

強請ると、満足そうに笑う五島。こいつは本当に真性のドSだ。快楽に身を委ねてされるがままに突かれていると、ふと五島が動きを止めた。

「やぁッ、なんで…」
「しっ、誰か来ますよ」

そう五島が言った途端血の気が引いていくのがわかった。遠くから聞こえる足音。だが徐々にこちらへ向かってきている。ここの部屋は一番端にあるから恐らく日高が帰ってきたのだろう。五島が自身を引きぬこうとした。が、

「ぁああああ、!?」

そのままズルリとまた挿入される。日高がもうそこまで来てるのに、なんで、
そのまま腰の動きを早められ、声が出そうになり慌てて自分の腕を噛み声を我慢する。

「ふっ……ッ、んー!」

コツコツコツ、と足音がドアの前で止まる。ヤバイ、と思うのに先走りがまたどぷりと溢れてしまう。やだ、やだ、

「あれ?」

ドアをガチャガチャとするが開かないらしく、扉の向こうの日高が戸惑いの声をあげた。そして五島が微かにクスクスと笑う。

「おーい!ゴッティー!いないのかー!?……クッソあいつ俺が鍵持たねーの知ってんだろうがよ…」

そのまま扉の前から去っていく日高。足音が遠ざかっていく。


「ッふふ、はははは!傑作ですねぇ、日高も、あなたも」
「…ッ、な、にが…ンァ、はぁア!」
「日高に見られそうで感じました?ゾクゾクしました?」
「っんなわけ……!」
「そのわりには今日一番の締め付けでしたよぉ、ココ、」
「ひっ……ィ、ン」

入れられたまま腰を回される。気持ちよくて、堪らず反論するのを忘れてしまう。

「はっ……伏見さん、イキたいですか?」

その問いに間髪入れずコクコクと頷く。すると奴は俺を抱き竦めて髪を撫でたあと、腰の動きを激しくした。

ぐぷぐちゅっぐちゅぐちゅっ

「ひ…ァ、ぁああー…ッ」
「ふし、みさん、中で出しますよ」
「ん!ぅん……ッ!出して!俺の中にごとーの、いっぱい……ふぁああぁっ!」

ぴゅく…ぴゅぴゅっ、びゅく

喉を目一杯反らして引き絞る様に嬌声を叫び、目の前が真っ白になる気がした。 ドクドクと俺の中で脈打ってるペニスにをまた締め付け、きゅっ、と後孔がすぼまった。




「……どうでした?気持ち良かったですか?」
「腰痛い。背中痛い。最悪。お前死ねばいいのに」
「んふふ、ひっどいですねぇ、あんなに感じてたくせに。」

あのあと散々に汚れた床を五島が掃除して、俺は風呂場で腰痛に悩まされながら後処理するという最悪な展開だった。ついでに風呂も入ってソファで寛いでいると五島が髪乾かしますよ、と一言。頼む、と言った瞬間、日高が帰って来て一瞬あ、と思うがアイツはまさか数分前まで俺らがここでセックスしていたと思わなかったらしく、「伏見さんちわーっす!なんかイカ臭いっすね!」と馬鹿でかい声で挨拶するだけだった。

「ゴッティーなんで鍵閉めて出掛けてたんだよー!俺鍵持たねーの知ってんだろー?」
「ごめん、癖で閉めちゃって。でも榎本のとこに行ってたんでしょ?」
「まぁな!ゲームして時間潰してきたけどよ!てか伏見さんなんでここで風呂入ってんすか?」

ギク、と体が強ばった。でもそこはすかさず自然に五島のフォローが入る。

「ほら、こないだめっちゃ行列出来てるお菓子屋さんのお菓子貰ったでしょ?それ、伏見さんが食べたいって言って部屋に連れてきたんだけど、伏見さんがジュースこぼしちゃって。で、シャワー貸したんだよ。」
「おーなるほどなー!伏見さん、甘党だったんすか?」
「あ、ああ、まあな」
「だったら言ってくれればいいのにー!いつでもお菓子持っていきますよ!」
「や、別にいい」

なんとかその場を乗り切って安心するが、全ての元凶は五島だ。日高が1人でベラベラ喋ってる間に五島をギロリと睨むがやっぱり効かないらしく、ヘラリと笑って俺の耳元に向かって、

「ふふ、また、やりましょうねぇ?」

と吐息混じりに言われる。それを突き放せないくらいには、俺もマゾなのかもしれない。認めたくないけど。

それから頻繁に日高からお菓子を差し出されるようになり、大してお菓子が好きでも嫌いでもないのに、と五島が恨めしくなってとりあえず日高にあたった。



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